スカルプトはZbrushかBlenderか?(第2回)2023年版

(約 4,900文字の記事です。)

スカルプトはZbrushかBlenderか?この選択において重要になるのは「あなたに必要な最大ポリゴン数」ということを前回の記事で紹介した。今回はそこについて深掘りしていく。

前回の記事はこちら。

と、ポリゴン数を検討する前にとても重要な概念を理解する必要がある。

目次

フラットシェード?スムーズシェード?

Blenderでも他のDCCツール(Maya, 3ds Maxなど)でも、当然ながら2種類の見え方を選べる。名称はDCCツールごとに異なることもあるがこの記事ではBlenderを使用するのでフラットシェード、スムーズシェードの話。

左がフラットシェード。カックカクで1枚の板ポリがしっかりと分かる。ピンク色の頂点法線(Blenderでは分割法線という独自名称)が面の数だけ表示されてとげとげしい(笑)

右がスムーズシェード。どちらも同じメッシュ構造だが見た目が滑らか。ピンク色の頂点法線も演算によって1頂点につき1本に重なって表現されている。

大和 司

頂点法線の情報自体はメッシュに保持されているのでいつでも可逆にフラット/スムーズな表示に切替えられるってわけね。)

だが耳を見れば分かるようにスムーズシェードであってもメッシュの形状そのものはカックカクのまま。あくまでもビューポート上で見える「影」を制御して滑らかに見せているだけ。嘘をついているのだ。

ピンク色の法線についての詳細はこちら。今は読み飛ばしてOK。

だが作り上げたキャラなどの最終出力が画像だったり動画だったり、ディスプレイ上で「見える姿が全て」のメディア用のキャラの場合はスムーズシェードがとても都合がいい。ローポリでもハイポリっぽい見た目になるので。

スムーズシェードは嘘絵。Blenderではスムーズシェードを使うことで「ローポリでもハイポリっぽい表現」ができる。

Zbrushはフラットシェードのみ

これに対してZbrushはフラットシェードのみだ。なので見た目を滑らかにするためにはディビジョンレベルを上げるしかない。チカラ技だが本質的でもある。だから最終出力がフィギュア原型を3Dプリンタで出力する場合のように「物の形状そのもの」が重要な場合、形状を素直に表現しているフラットシェードでなければならない。この場合はスムーズシェードの嘘絵はむしろ邪魔なだけ。

こういう理由でZbrushはハイポリに強い、というかハイポリに強くなければ役に立たなくなるツールだ。

大和 司

(ただしハイポリにすることで「データが重くなる」以外の弊害もたくさんあるのだが、今回は割愛。)

Zbrushはフラットシェードのみ。

スムーズシェードは細分化2回分に相当

これは主観による判断だが、私の判断ではスムーズシェードは2回分の細分化に相当すると思っている。Zbrushの場合はサブディビジョンレベル2回分の適用、Blenderの場合はマルチレゾリューション・モディファイアの細分化2回分だ。

フラット500ポリ、スムーズ500ポリ、フラット約8,000ポリ(Zbrushで細分化しBlenderにインポート)

形状を見れば明らかにZbrushでサブディブレベルを2回UPさせたメッシュが滑らかだ。当然だが。だが縁以外の表現力で見れば、スムーズシェードの見栄えはおよそ2回分のサブディブUPとかなり近いと思う。ポリゴン数で見れば500ポリ vs 8,000ポリだ。ポリゴン総数は4×4=16倍も違う

大和 司

もちろんよく見れば違いがある。だがこれは次回テストするノーマルマップによる嘘の陰影表現でローポリでも回避できる。ただしディスプレイ上でのみ表現されるキャラクターの場合に限るが。

用語「サブディビジョン」の違いに注意

用語の定義(サブディビジョン、ダイナミックサブディビジョン)

Zbrushでサブディビジョンレベルを上げる作業を、Blenderでは「マルチレゾリューション・モディファイア」の適用で実現させている。
そしてBlenderで「サブディビジョンサーフェス・モディファイア」の適用を、Zbrushではダイナミックサブディビジョンで実現させている。

大和 司

「サブディビジョン」という用語はZbrushとBlenderとで異なる概念を指しているので要注意!

イメージとしては「ポリゴン密度をどんどん上げたい」のか「自動で角丸化させたい」のかで切り分けられるので、あとは「何というボタンを押すんだっけ?」と思うくらいで問題ないだろう。

ポリゴン数16倍と、見た目の違いの差は?

細分化を1回行なうとカトマルクラーク法(Catmull–Clark subdivision)ではポリゴン数が約4倍に増えると思っていい。(詳細は各自で調べてね。)なのでサブディビジョンレベルを1つ増減させるとポリゴン数が4倍増減するわけだ。

フラット500ポリ、スムーズ500ポリ、フラット約8,000ポリ(Zbrushで細分化しBlenderにインポート)

フラットシェードとスムーズシェードでは同じポリゴン数だと思えない見た目の違いがある。もちろん背景との境界線を見ればローポリだと言うことが分かるが、陰影だけ見ればそりゃスムーズなシェードなので見た目が滑らかだ。

そしてスムーズシェードの見た目の陰影具合に近づけるために細分化をする場合、1回では足りず、2回は必要だ。この記事では細分化2回分でスムーズシェードの見た目になると仮定して話を進めよう。

大和 司

そして細分化を3回かけるとさすがに高品質なメッシュだとすぐに分かる。そりゃポリゴン数が4x4x4=64倍も違えば何もかも違う。

自分が作っているモデルの最終出力が3Dプリンタなどによる「物質」なのか(フィギュア造型など)、それともディスプレイ上で眺める「デジタルメディア」なのか(ゲームキャラなど)。

理想のポリゴン数÷16=必要量

ということは、制作物がデジタルメディア用途の場合、実は作業中に必要な最大のポリゴン数=欲しい見た目のポリゴン数の16分の1、ということになる。逆に言うと理想的な解像度までサブディビジョンレベルを上げたあと、そこからサブディビジョンレベルを2段階落とした状態でメッシュを確定させて作業すればOKということだ。

だとすればBlenderのスカルプトモード利用時には、600万ポリ×16倍=9,600万ポリ相当の表現ができることになる。

大和 司

あれ?これって結構なハイポリ表現のレベルに迫ることができると言うことでは?

ただし問題は600万ポリでの特定のブラシのレスポンスの悪さ、これは気になるところだ。これを回避しようとして仮に400万ポリで作業すれば、表現力は400万ポリ×16倍=6,400万ポリ相当になる。あれ、これでも結構なハイポリ表現力だと思うのだが。

やっぱりZbrushは必須なのか?

物質化する前提の場合

もしフィギュア造型ならば形を素直に表現しているフラットシェードでポリゴン数を上げて作業をした方が無難だ。というのも細分化レベルを上げることで形状が微妙に変化するため、それを避けるためには作業時の細分化レベルを事前に上げてから仕上げる必要がある。

大和 司

(一般的なワークフローとしては作業しながら徐々に細分化レベルを上げていく。例えば基本メッシュ作成、レベルUPして中程度の細部を作る、レベルUPして更に重要な細部を作る、の繰り返し。あとから基本メッシュ形状の修正時にレベルダウンして作業するなど、サブディビジョンモデリングではレベルの往復が重要。)

ポリゴン総数は4のN乗の倍々ゲームで爆発的に増えていくため、必然的に最終的にはかなりのハイポリにならざるを得ない。最終的に何千万~何億ポリになるかは分からないが、それでも動くのがZbrushの凄いところ。

デジタルメディアの場合

ゲームキャラの場合はリアルタイム性が重視されるので1キャラ当たりのポリゴン総数は事前に指定されているはずだ。またアニメーション用途の場合もレンダリングの軽さなどの諸事情によってこれまたポリゴン総数が指定されているだろう。

ただしこのようなデジタルメディアの場合であっても、作業時には一時的にハイポリが必要になる場合がある。例えば高品質なノーマルマップを得るために、一時的ではあってもハイポリなモデルを作成する場合だ。このハイポリ作業が快適にできなければならない。

大和 司

ん?ということは一時的にであってもハイポリで快適に作業する必要があるならばZbrushは必須なのでは?🤔

Zbrushの機能と価格のアンバランスさ

お金に余裕があればZbrushを持っておいて損はない。それだけだ。

お金が全てを解決するゥッ!

大和 司

……、まぁ、そうなんだけどね🤔

Zbrushに毎年52,800円を支払えればね、あるいは毎月5,500円支払えればね。(Zbrush 2021までの永久ライセンス購入者を除く。)またこれから13万2,000円を払ってZbrushの永久ライセンスを買う人は極少数だろう。サブスクと天秤にかけるのが普通だろう。

そう、スカルプト特化型のZbrush、前の記事で書いたようにZbrushはDCCツールではないため、DCCツールでは当たり前のことがZbrushではできなかったりする。それが特化型ツールの宿命なのだが、その特化型ツールの価格がDCCツールの代表格であるMayaの「Maya Indieの年額42,900円」よりも高いこと、これを疑問視する人もいるだろう。もちろんMAXONも商売だしどんな価格で販売しようが自由だが、私もさすがに今のZbrushは「機能の割」にはサブスク価格がかなり高いと感じている。

大和 司

個人的には年額3万円台ならば人に勧めるだろうし、既存ユーザーにも新規ユーザーにも優しかったのだろうが……。

3DCGクリエーターの中にはAdobeのCreative Cloud(アドビCC)をサブスクしている人も多いだろう。PhotoshopやAfter Effectsなどのために。他にもサブスタンス3Dペインターもサブスクしているだろう(ポイントでライブラリからテクスチャを買うため)。

なので結構な月額がソフトウェアのサブスク代として消えていく。そんな中で「スカルプト特化型」のZbrushにもサブスクするか?できるか?😱……、う~ん、色々と考えるユーザーもいるだろう。

デジタルメディア用ならBlenderでもいける?(続く)

とりあえずフィギュア原型の製作用途としてはZbrushを使うメリットがかなりあることは分かった。そしてそのためにはお金(サブスク費用)も必要だ(Zbrush 2021までの永久ライセンス購入者を除く)。なので予算を確保できる場合であってフィギュア原型の製作用途であればまずはZbrushが第1候補になる。

大和 司

この結論は割と簡単に予測できた。

問題はデジタルメディア用途の場合だ。静止画・動画・ゲーム、VTuber用キャラなど。これらを作る場合に本当にZbrushでなければならないのか?という疑問に対し、Blender 3.6 LTSではスムーズシェードを利用した場合、フラットシェード換算において6,400万~9,600万ポリ相当の表現力があることが分かった。

で、問題はその表現力をそのままノーマルマップなどの作成に使えるのか?ということ。

大和 司

もし高精細なノーマルマップを作成する際に9,600万ポリ以上のハイポリ表現が必要となると、残念ながらZbrush一択という結論になる。

果たしてどうか?

次回はBlenderによるハイポリ表現をサブスタンス3Dペインターでノーマルマップにベイクする実験を行ない、果たしてその表現力はどの程度かを調べてみたい。

次回をお楽しみに😊

続きはこちら。

今回の創作活動は約3時間30分(累積 約3,351時間)
(915回目のブログ更新)

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