スカルプトはZbrushかBlenderか?(第4回 最終回)2023年版

(約 5,500文字の記事です。)

前回の記事でスムーズシェードのBlenderでは「フラットシェード時の9,600万ポリ相当の表現が可能」だと分かった。それに対してZbrushではごく普通にそれ以上のハイポリでも動作する。さてどちらがいいのか?今回の記事でいったんシリーズを完結させる予定。スカルプトはZbrushかBlenderかの結論を出そうと思う。

前回の記事はこちら。

目次

あなたはどのタイプ?

スカルプトを行なう際に選ぶソフトはZbrushかBlenderか?今は二択なので消去法でもいいし、それじゃないと困る理由がある場合でも、すんなり決まると思う。

  1. 諸事情によりZbrushを使わなければならない人、Zbrushのほうが都合がいい人
  2. 基本的にZbrushを使うがBlenderにも興味がある人、使ってみたい人
  3. 諸事情によりBlenderを使わなければならない人、Blenderのほうが都合がいい人
  4. 基本的にBlenderを使うがZbrushにも興味がある人、使ってみたい人
  5. (番外編:既にZbrushもBlenderも使っている人)

まず①だが、そのままZbrushを突き詰めればいいだけなのでここで結論が出て終了😊

②については、Blenderは無料なので今すぐインストールして使ってみればいい。ためらう理由は何もない。あるいはメインとしてZbrushで作業をし、趣味や実験、スキルアップのためにBlenderで遊んでみるのもいいだろう。プロとして自分の引き出しが多いほうが後々自分を救うことになる。これは多くのプロが体験済みだろう。

特にデジタルツールで仕事をしている場合、ある日突然「パラダイムシフト」が起こって色んな仕組みが一気に変わるリスクがある。今なら例えばAIの導入など。これは分野を問わずデジタルツールを使う者の宿命だ。だから常に次の一手の準備をする必要がある。

大和 司

私はスカルプトというキーワードについてはその潮目の変化を感じている。

③は悩ましいので後述。

④についてはBlenderをある程度使っているはずなので、ポリゴンモデリングはできているはずだ。だから「次はスカルプトモデリングをしたい!」というBlenderユーザーだと予想する。なので当然ながらBlenderでスカルプトしてみた結果、ではZbrushではどうなのか?と考えている頃だろう。

その時点で3DCGの知識がかなりあると思うし、Blenderのスカルプトの何が不満でZbrushに何を求めるかが明らかとなっていると思う。なのであとはご自身でZbrush体験版を触るなり月額サブスクで使い込んでみるしかないだろう。

③諸事情によりBlenderのほうが都合がいい人

上記選択肢の③「諸事情によりBlenderを使わなければならない人、Blenderのほうが都合がいい人」、実はここに当てはまる人の割合は、予想でしかないが、アマチュアがかなり多く、次いで少しのプロクリエーターだと思う。

3DCG初心者やアマチュアにはBlenderが有利

「若い頃から既に3DCGで生きていく!と決めて専門的なコースに進んだ人」を除けば、大半は3DCGの素人ということになる。学生ならば学割ソフトでMaya, 3ds Maxの選択肢があるが社会人になってからはちょっと厳しい、主に金銭面で。何よりもご自身が本気なのかどうかも分からないし挫折する可能性もあるので、簡単にIndie版も買えないだろう。Indie版は年額一括サブスクなので😭

そこで最初の選択肢が無料のBlenderだ。

また特定の分野ではMaya, 3ds MaxなどよりもBlenderが有利な場合もある。VRChatやclusterなどのVR SNS用のアバターの改造や漫画・イラストの参考資料作り、動画製作で新規参入者など、個人レベルで3DCGを活用し始めた人の多くがBlenderベースとなっているはずだ。(これは推測でしかないが、あながち間違いでもないだろう。)

プロはまだオートデスク製品が主流だが

それに対してゲーム用途やVR SNS用のアバターのフルスクラッチやVTuber用モデルなど、モデリング+セットアップの話になるとBlenderだけではなくて、Mayaなども出てくる。この場合は主にプロが仕事として製作を請け負った場合だ。個人ではなくて法人と仕事のやりとりではやはりまだまだオートデスク製品が強い。

だがプロでも最近ではBlenderも勉強して使い始めている。両方使っている人も結構増えてきたという印象。それだけBlenderの勢いはある。

Blenderの放つ魅力(吸引力)

要するにBlenderにはプロアマ問わず多くの人が注目しているのだ。ただ実際に何にどう活用するかを決めかねている状況であってBlenderというタイトルが放つ「ある種の吸引力」、これは見逃せない。『Zbrushなら当たり前にできることがBlenderでも「ようやく」できるようになった』など、とにかくBlenderの話題は多くの人が常に注目している。これが一つのBlenderの魅力とも言える。

話が脱線したので元に戻そう。

スカルプトでBlenderを使いたい人はどれくらい?

スカルプトといえばZbrushが定番のソフトだ。これは間違いない。だがこのシリーズで試したように、「デジタルメディアが最終出力となるモデル」を作る場合、どうやらBlender 3.6の能力でもスカルプトによるノーマルマップは十分な表現力を持っているようだ。そうなると今後はスカルプトはZbrush一択ではないのかも知れない。

もしBlenderのスカルプト機能で必要十分な人にとっては、Blender内でポリゴンモデリングもスカルプトモデリングも自由に使えて、リトポ、UV展開、リギングからウェイト調整、アニメーションや静止画・動画レンダリングもできるとなると、これは人によってはかなり魅力的なツールになる

データの受け渡しが不要になるので色々効率化できる。

なので「純粋なモデリングが最終アウトプットとなるようなフィギュア造型」を除けば、実はDCCツール特有の機能も使いつつスカルプトもしたいというBlenderユーザーは多いのではないか?実は水面下ではかなりのニーズがあるのではないか?とも予想している。具体的な数字は持っていないが、恐らくかなりの数のBlenderユーザーがスカルプトに興味を示すと予想している。

大和 司

(現在で既にそれを両立できている人はかなり少ないだろうが、将来的にそれを試したいというニーズは大きいと考えている。)

【結論】理由がないならZbrush一択。理由があるならBlenderもあり

実はこの結論、第1回の記事内にある「オススメYouTube動画」のほとんどの配信者と同じ結論。

Zbrushでないとダメな人

Zbrushでなければならない人は当然Zbrushが必要だし、これからスカルプトを始める人で特にソフトにこだわりがなく、かつお金に余裕がある人はまずはZbrushから始めるのがいいかもね、ということだ。スカルプトに関する色々な情報がZbrushで既に出回っているので、教材はたくさんあるため。

ただしZbrushはスカルプト特化型の専用ツールなので、DCCツールで当たり前のように実装されている機能が使えないなど、専用ツールゆえの使いにくさも、あるにはある。だがスカルプトに関してはもちろん専用なので機能に不足はないだろう。

デメリットとしては良くも悪くも特化型の独特なツールであるため、他の3DCGツールと全く異なる使い方や概念・UIだったりするのでZbrushを3DCGツールの基準として考えると割と偏ったものの見方になりやすい。Zbrushでのワークフローやメッシュの造型手順のセオリーが、他のDCCツールと異なりすぎていて、ともすればDCCツールのポリゴンモデリング手法よりもかなり非効率なワークフローになることも有り得る。(この点については第1回の記事の中で「両者を比較しているYouTube動画内の製作時間の比較」という形で動画化されている。)

とはいえ「どうしてもZbrushでなければならない人」にはもう選択肢がないのでそこで頑張るしかない。

Blenderのスカルプトがいい人「可逆性」を重視

Blenderで敢えてスカルプトするメリットは、DCCに普通にある機能をそのまま普通に使えつつ、スカルプトモデリングもできる点だ。UV展開、簡易なテクスチャ作成、リギング、スキニング、アニメーション作成、静止画・動画のレンダリングまで可能。そのうちモデリングの工程でスカルプトが使えれば、ハイポリメッシュで細部を作り、サブスタンス3Dペインターでノーマルマップにベイクしてローポリモデルをリッチな表現力で見せることができる。

またBlender特有の「可逆的な」作業の強みを生かせる。モディファイアによる可逆性はもちろんのこと、リグポージングによってポーズの微調整もマウスドラッグ一発で調整できる。

あとは作業効率の問題だ。全く同じ作業をZbrushでやる場合とBlenderでやる場合とを比較して、どれくらい時間差が生まれるのかで結論が変わる。だがもしほぼ同じかZbrushより早く仕上がるとなれば、Blenderでのスカルプトを探る価値が十分にある。これは「どんなものをスカルプトで仕上げるつもりか」によって結果が変わると思う。Blenderのスカルプトは「何でも出来るわけじゃない」ので、Zbrushのほうが有利かZbrushでしか作れない造型のタイプならば、残念ながらBlenderでのスカルプトに固執してもメリットはない。手間と労力の割には仕上がりがパッとしない可能性すら、ある。

なのでBlenderでのスカルプトに向いている人というのは、恐らくはBlenderのスカルプト機能だけで最終完成型を作り上げられるようなモデルを作ることになる人だけだろう。Blenderのスカルプト機能は特化型のZbrushと比べれば当然ながら機能では劣る部分もある。ただしその劣った部分が最終完成型までのワークフローの中で足を引っ張らないならば、Blenderでスカルプトしても何の問題もない

結果、逆説的になってしまうのだが、「作りたいモデルがたまたまBlenderのスカルプト機能のみで仕上げられるモデルを手掛けられそうな人だけが、Blenderのスカルプト機能を使ってモデルを仕上げられる」という、「鶏と卵の関係」のようなパラドックスに陥りそうだ。

要するにBlenderのスカルプト機能で「作り上げられそうなモデル」は仕上げ可能だが、「作り上げられないようなモデル」についてはZbrushで作った方がいい、ということになる。(だったら最初からZbrushでいいじゃん?という結論は先に書いたとおり。)

大和 司

なので万人に「Blenderでのスカルプトは最高!」とは言いきれないもどかしさがある。

じゃあBlenderのスカルプトでどこまでやれるのか?

これが分からない(笑)理論上ではスムーズシェードで(フラットシェードの)16倍のポリゴン数の表現ができることが分かったが、問題は肝心のスカルプト体験と、スカルプト機能そのものの検証ができていないことだ。

なので実際問題、Blenderのスカルプト機能で何をどこまでできて、どこが快適でどこが不満なのか、これを明らかにしていかないと「Blenderのスカルプトでやれること」というテーマ自体がまるで雲を掴むような、フワフワしたまま終わってしまう。

分からないなら試してみるしかない!

というわけで私にとっての結論はこれだ。Blenderのスカルプトでできることについてじっくり検証していくことにした。今後はBlenderでのスカルプトを主な活動内容にすることにした。もちろん必要に応じてZbrushも触るが、徐々に活動の軸をBlenderに移していくことになる。(理由については追々日記として公開していく予定😊)

まずはスカルプト機能について検証していきたい。

今後はBlenderのスカルプト機能をメインに活動する予定

というわけで第4回にまで至った「スカルプトはZbrushかBlenderか?」の、私なりの結論はBlender。特に「Blenderのスカルプトを探求したい」のだ。「Blenderのスカルプト機能がどこまで自分にとって役に立つか」を検証するためにBlenderのスカルプトを試していく、ということになった。

もちろん必要ならばZbrushも使う。だがその際にも「それはBlenderでもできないか?他のツールでもできないか?」を検討することにする。どうしてもZbrushでなければならない理由を見つけるためには、そういう全方位的な検討が必ず必要だ。

というわけで今後はBlenderのスカルプトを探る旅が始まります😊

これに伴い今後の活動方針が大きく変わります。Webサイトの運用方針やBOOTHの運用方針なども大きく変わります。X(旧Twitter)アカウントについても今は鍵アカウントですが将来的に公開アカウントに戻す可能性もあります。

今後の発表をお待ち下さい。

今回の創作活動は約4時間(累積 約3,358時間)
(917回目のブログ更新)

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