Zbrushで下書きを直接「立体」で作る「下書きモデリング」のすすめ

(約 5,600文字の記事です。)

プラグイン開発も一端終了したので少しずつ造形に入っていこうと思う。(バグフィックス対策は随時実行しますが。)今回は他の3DCGソフトではなくZbrushならではのモデリングアプローチの紹介。

目次

従来の3DCGモデリングのアプローチ

いわゆるポリゴンモデリング。BlenderやMayaなど、最近ではMMDキャラのモデルの形がまさにそれ。頂点を一つずつ作って動かして、荒いサイコロから徐々に人型、マネキン、最後に人っぽく丸くなるというアプローチ。3DCGではどうやら長年このアプローチだった。もちろんデータが軽いなどのメリットがあるためリアルタイムムービーでは必須だった。頂点モーフなどによるアニメーションのさせやすさもこれ由来なので、意味のあるアプローチだ。

Zbrushのアプローチはハイポリでも構わない

一方でZbrushは特殊で、いきなりハイポリから造形できる。だからこそ粘土をこねるようにモデリングができる。それがZbrushならではの強みだ。これが他のツールではできない。(もちろんBlenderの類似機能でもできるが、ツールとしての完成度、洗練具合から考えるとまだまだZbrushが有利だ。そして何より当プラグイン群があるw )

このようにZbrushでは、従来のローポリからハイポリへ、とは逆のアプローチができる。いきなりハイポリからスタートできる。もちろんデメリットもあるがそれは後述するとして、いきなりハイポリのメリットとは何か?

下書き三面図を書く手間で立体のラフモデリングができる

これです。ただしメッシュの形状(トポロジ)を一切無視して作るので厳密にはラフモデリングよりもさらに前段階になるので、私は勝手に「下書きモデリング」と呼ぶことにしている。名前の通り、紙と鉛筆でアイディアを下書き&落書きするように、立体で下書きする。だから下書きモデリングだ。

絵で三面図を書くと、ほぼ100%の確率で「立体化できない矛盾」にヒットする。これはモデラーを悩ませる。

トハ様のこちらの記事が分かりやすくて勉強になったのでご紹介します。

3DCG暮らし
キャラのモデリングは三面図必須?三面図に頼りすぎるモデリングをおすすめしない理由 三面図は便利な資料ですが、三面図に頼りすぎる3Dモデルの作り方はあまりおすすめしていません。この記事ではおすすめしない理由について例を交えながら書いていきます。

アイディアを最初から立体で考える

だったら最初から立体で考えればいいじゃない?というのが私の発想。そのためのツールがZbrushであり、スカルプトリスプロモード。

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そして当プラグイン群の「スカルプトリスのパレットナイフ」と「カーブナイフ」である。

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例えばこれ。何気なしに、何となく、物語に出てくる盾っぽい物を考えたいな、と思ってマウスで適当に10分で作ってみた。下絵も何もない。このモデルこそが下絵だからだ。

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絵で描いて10分でこの情報量は難しいだろう。線を描いては消して、という作業だけで5分はかかる。必要箇所に文字の注釈をつけてジャスト10分になるだろう。
例えば、

  1. 中央部分は平ら
  2. それ以外は丸いカーブ
  3. 裏面は平ら
  4. この辺に傾斜
  5. 更に下にも傾斜
  6. この辺は平坦

という文字と線と領域を色鉛筆で色分けするだろう。絵で描くならば。複数人で作業するならそれも必要だ。だが個人で自作で完結させるならばその情報は十分だろうか?やはり平面で立体をきちんと情報として残すのには無理がある。

だがZbrushでさらっと作ったこのスクショはどうか?もちろんZPR保存してあるので立体情報として残っているし、スクショにすれば数秒で平面情報に変換できる。何の苦労もない。ここから三面図をつくるのも1分程度だ。苦労しない。どこがどれくらい平坦で、どのカーブがどんな曲面なのか、そんなのは見れば分かる。それが立体で下書きする最大のメリット。

つまり、作り手の立体イメージが直接立体になっているわけだから、細かい造形の話を除けば、極めて正確な造形情報がそのまま立体になる。これがハイポリでいきなり下書きモデリングすることの最大のメリット。

そして何より作り手にとって最初から直感的。もちろん作り手はZbrushのブラシ操作や当プラグイン群の使い方などの最低限の学習が必要だが、それさえ終われば立体はいつでも立体として作り始められるというとてつもないメリットがある。そして効率的でしょ?立体を作るならば下書きもまた立体からスタートした方がいいに決まっている。当たり前でしょ?

だがその当たり前のハードルが今まで高すぎた。そして「はい、Zbrushあればできるから使って」と渡されても、やはりそこからイメージ通りの立体に「ざっくり作るだけでもハードルが高く、多かった」ということは否定できない。

それを何とかしようとして開発したツール群も当プラグイン群に含まれている。そしてスカルプトリスプロモードの実装による直感的な立体化作業が可能になった。立体イメージは粘土をこねる感覚でいきなりデジタルで、いきなり立体として作れる時代になったのである。

ハイポリが当たり前なのは「Zbrush内でのみ」という落とし穴

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このハイポリ、Zbrushなら普通に作業できても他のソフトでは無理。Zbrushだけが特殊なのだ、ということにZbrushだけをいじっていると気付かない。これは本当に凄いことなのだがZbrushでは当たり前に使えてしまうので錯覚する。「それ、何百万ポリゴンですか?」ということに。

なので、Zbrushで「造形することは誰でもできる」のだが、実はそれをその美しさを保ったまま数万ポリに減らす技術こそが、実はZbrush使いに求められる2番目の重要なハードル。技術的にはこっちが最初のハードルと言うことになる。思い通りの造形をハイポリで完成させた後に、その特徴だけを残してポリゴン数を減らす技術。これが重要。

そしてこれを実現させるためには、ZRemesherとZRemesher Guideと、それでも上手くいかない場合用にサブツール分け、ブーリアン結合、場合によってはダイナメッシュ後のあれこれ操作など、たくさんのZbrushの使い方を覚えなければ解決できない。

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そして完璧に解決するならば最終手段の「手動リトポ」に行き着くが、これは手間と時間の点から最終手段。恐ろしく時間とエネルギーを要するのだ。1頂点ずつのメッシュ張り直しと考えればいい。ぞっとする。と、ここら辺までで一気に難易度がUPである。

そしてその知識量は、BlenderやMayaなどの統合系ソフトでのポリゴンモデリングの知識に匹敵するかもしれない。だったら最初からBlenderなどでモデリングすればいいじゃない?というアイディアもある。確かにそうである。

3DCGが包括する広い分野故に何から始めるべきかがわからなくなる

もちろん統合ソフトからスタートすれば損はない。学生ならMayaも視野に入る。Blenderも勢いがあるので今後も注目だ。だが統合ソフトは深くて広い。何をやりたいかをはっきり意識していないと使い方の学習で満足してしまい、そこから先に進まなくなる。趣味ならなおさらだ。

「可愛い女の子キャラを作りたいのに、なかなかロボットから脱出しない」

これがローポリモデリングで有り得る。でもZbrushでも実は、
「奇妙なクリーチャーから脱出できない」

ということも有り得る。
前者はトポロジ=面割りのノウハウがないためゴールのイメージにたどり着けず、後者は面のブラシ制御ができないためいつまでも面荒れを整える無限ループから脱出できずに進まない。

それでもある程度画力がある人がZbrushを使えば、面を整える些末を除けば、数時間程度で人型、キャラクターの特徴を立体化できるだろう。一方でポリゴンモデリングならばまだ藁人形状態だと思う。なので初動の勢いと初動の完成型の質が高いのがZbrushの特徴だと言える。
一方で、ボーン(リグ)を入れたりモーフによるアニメーションなどを意識すると逆転し得る。ローポリモデリングの有利な点はデータの軽さなのでそれを生かしたアニメーションやモーション制御になると、最初からそれを意識した上でのポリゴンモデリングによる完成キャラのほうが後半の巻き返しに強いのは間違いない。が、もちろん相当のノウハウがあった状態でポリゴンモデリングすれば、の話ではあるが。

造形の目的は何?

実はこれに尽きる。これがはっきりしていれば、下絵+統合環境下でポリゴンモデリングをした方がいいのか、Zbrushで下書きモデリングからスタートした方がいいのか、あるいはZbrush→統合環境の順で下書きモデリング→ポリゴンモデリングに工程を分けた方がいいのかが決まると思う。企業文化や過去のワークフローをどれだけ重視するかにもかかっていると思う。

個人的には、Zbrushによる下書きモデリングがもっともクリエーターの直感的なイメージを立体化できるように思う。思考も成果物も立体だからね。フォーマットが立体で共通なのでいいだろうと思う。そこから先はハイポリからローポリへの変換作業でしかない。ポリゴンモデリングなら手作業で一からの作り直しになるだけだし、ZRemesher等を使えばそれらを半自動化するだけに過ぎない。手段の問題。

面割りはその後の作業の都合でしかないわけだし、デザインとはそもそも無関係の部分なわけで。が、フィギュア造形なら全く必要ない部分だったりと、結局は造形の目的と最終アウトプットとを考えれば、自ずと答えが出てくると思う。

下書きモデリングならスカルプトリスプロモードを積極活用しよう

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これを使わない理由がない。あまりこの機能が大々的に宣伝されているサイトが少ないが、まさに直感的に造形するための機能。Zbrush2018から実装された機能だが、これが無いとZbrushを使う意味が半減すると言ってもいい。

スカルプトリスプロの使い方の記事はこちら。

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当プラグイン群でもこれを最大限に活用するためにプラグインを2つ開発している。「スカルプトリスのパレットナイフ」と「カーブナイフ」である。

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ハイポリであっても、下書きなので、本当のラフモデリングを開始する際にも、下書きモデルを半透明化すれば、大いに使える立体ガイドラインになる。どこをどういうローポリで平面化すべきか、あるいはどこをどういう曲面にするためにハイポリで作るべきかを判断できる。そしてその半透明な下書きモデルに従って作業を続ければ大外れのない堅実なラフモデルができる。その後は下書きモデルは不要なので非表示化したり別Toolに移動させて消してもいい。そこから先はローポリベースの作業になるので、そのままZbrushでもいいし、obj, FBX等で別のツールに持っていってもいい。

何にしても下書き造形はきちんと仕事を果たす。

下書きモデリングこそがZbrushの強み、だと思うのだ

私の言いたい結論はこれ。Zbrush以外ではできないアプローチ方法。立体を下絵ではなく下書きモデルとして立体化しながら検討する。その手間は落書きと同じであること。だったら最初から立体のほうが便利だ。その代償として使い手にZbrushの使い方の学習コストを要求する。ハイリスクハイリターン。でも個人制作ならば、絵であっても立体造形であっても、Zbrushスタートの、いきなり立体スタートはメリットだらけである。企業レベルで集団制作ならばデザイナーによる3方向からの絵も有りだろうが、個人制作ならば下絵がいきなり立体であっても何ら問題ない。私がZbrushをおすすめするのはこの点にある。

あとはそれを提唱する私自身がきちんとクリエイトして立体物や成果物を量産していかないと、説得力が無い、と深夜に気付いたのでした(笑)

今回の創作活動は約1時間15分(累積 約896時間)
(300回目のブログ更新)

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