画力がないなら立体を作ればいい

「何を作る」より「どう作るか」を考えたい人

Zbrush用のモデリング手法を開発することにしました

(約 6,700文字の記事です。)
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Zbrushのプラグイン開発は「手段であって目的ではなかった」のです(笑)ようやくZbrushでモデリングできるようになったので、本命の「モデリング手法そのもの」の開発に着手します。今回は長めの記事。自分の備忘録というか、今後の方針のようなものなので、結果、長文になってしまった。

名称は「大和式モデリング手法」Ver.0.1(仮)

とりあえず仮名です。手法が完成する頃にはもっといい名前になっているかも知れない。プラグイン開発と同様にバージョンナンバーで手法の中身を管理します。今はまだアルファ版。ベータ版にすらなっていない。

大和式モデリング手法が目指すもの

大和式モデリング手法の特徴は以下の通り。

  1. デジタルを用いた「実はアナログな制作手法」からの脱却
  2. スカルプトをなるべく使わずに完成させる
  3. デジタル資源のフル活用(コピペ、使い回し、マクロやプラグインによる自動化、自作ブラシによるメッシュ生成)
  4. 全部やり直ししないで部分的にやり直せること
  5. スカルプトリスプロモードで下書きモデルを作る
  6. マスクやペイントブラシで下書きモデルに完成イメージを描き込む
  7. 下書きモデルからローポリモデルを生成する
  8. 完成させたら必要に応じてハイポリ化、最終調整
  9. スカルプト力が前提でありながら、それ以外のものを積極的に活用するスタイル

ざっとこんな感じだ。以下、各項目を簡単に書きます。

デジタルを用いた「実はアナログな制作手法」からの脱却

例えば、超絶ハイポリにして筋彫りをブラシで描き込む。これ、完全に「デジタルツールを使ったアナログ手法」だよね?デジタルの旨味がほとんどない。粘土コネコネがアンドゥキーになったくらいで大して変わらない。またZbrushで過去の一部の彫り込みを部分的に変更するってのも難しい手法だよね。全部やり直しならばアナログ造形と手順が変わらない。無駄が多いってことね。

また、造形の精度もアナログ作業と一緒だ。Lazy Mouseで手ぶれ補正が効く程度で、結局は職人技みたいに線を1本ずつ引くことになる。何よりもその技は、高速化も効率化もできない。使い回しもできない。ワンオフの技術だから時間効率は最悪と言える。ハイポリの中に作った鋭角な形は部分的な修正すら難しい。ハイポリで部分的な修正ができるのは滑らか造形だけだ。一部の作業ができるからといって、全部の作業ができるとは限らないのだ。

(ちょっとした工夫をすれば不可能ではないが、これもまた職人技的になる上に必ず成功するとは限らない。なので手法としては微妙ってことだな。)

そんな感じで、実はデジタルツール上でアナログ手法を再現しているだけのアプローチがネット上で紹介されている例は多い。だが初心者は気付かない。そういうもんだと思ってしまう。だがしかし!先達が残したそういう知恵を盲目的に受け入れるつもりはない。大和式モデリング手法ではそれらを排除してモデリングする。これが重要なポイントだ。

PCは新しいほど高性能なのである。ロボットやAIもそうだろう。必ずしも経験値・経験年数が全てだとは限らない。頭でっかちになってはいけない。考え方を固定することは危険だ。時代は常に変わっている。ならば自分自身も進化せねばなるまい。

スカルプトをなるべく使わずに完成させる

Zbrushなのにスカルプトを避ける?なぜか?

それはスカルプトが最も時間とエネルギーを消耗する一大作業だからだ。ここを減らせることはかなり直接的な省エネと時短になる。これは間違いない。

じゃあZbrushでなくて普通の3DCGソフトで造形してもいいじゃない?

最初からその通りです(笑)何で作るかは問題じゃない。完成までのトータルコストを考えたときにZbrushが一番いいだろうという造形を作る際に、最も効率がいいのはスカルプトが少ない手法だからだ。形ができていれば、どうやって作ったかは関係ない。それだけのことだ。

超絶ハイポリを扱う場合にはZbrush一択になることが多い

これがZbrush最大のメリットだろう。作業の一時的な場合であってもハイポリもローポリ並みにサクサク扱える環境はZbrushしかないだろう。そうなると他のソフトの往復よりはZbrush完結のほうが時間的コスト、エネルギー的コストが低いことは間違いない。

以下、コストとは、時間的コスト、エネルギー的コストの両方をまとめて単にコストと略記します。時短できて集中力いらず、作業の手間いらずってのが最小のコスト、ということになる。デジタルならばソレが可能だ。逆にアナログでは最大のコストと言うことになる。更に物体として現実に3Dプリンタなどから出力するならばその費用も必要だから、なおさらだ。

スカルプトするなら最小限に留めるという意味

何も、がむしゃらにスカルプトを避ける分けじゃない。必要ならばスカルプトすべきだが、何でもかんでもハイポリにしてスカルプトするという一つ覚えをかなり意識的に避ける、というのが特徴だ。スカルプトでしか造形できないこともあるのでそういうときには、如何に少ないスカルプト量で形を完成させるかを考えた上で、作業を開始する。これが重要。

デジタル資源のフル活用(コピペ、使い回し、マクロやプラグインによる自動化、自作ブラシによるメッシュ生成)

如何に少ないスカルプト量で形を完成させるかを考えたとき、デジタルツールの強みを考えることになる。

コピペ、使い回し

これが真っ先に思いつく。デジタル資源はコピペ可能だ。ベースとなるメッシュが特にそうだろう。似たような形は似たようなベースから作れば手間が少ない。当たり前だが、それをきちんとワークフローに組み込むために工夫していますか?ってことだ。

自作ブラシによるメッシュ生成

大和式モデリング手法では使い回しの具体的な手法の一つとして、IMブラシ、カーブブラシ、VDMブラシ、をXMD ToolBoxで管理して積極的に活用していく予定だ。

Zbrush用ブラシ管理ツール「XMD ToolBox」の導入と使い方 - 画力がないなら立体を作ればいい

大和式モデリング手法では、基本的に過去に一度でも作ったメッシュに近いものは二度作らない。代わりに都度ブラシとして保存し、そのブラシから呼び出してベースメッシュとして作業を開始する。だから自作ブラシが増えれば増えるほど、よりモデリングのコストが小さくなる。経験が直接的にコスト低下に役立つ手法なのだ。これもデジタルならではの直接的な恩恵だ。

マクロやプラグインによる自動化

造形だけではなく、その作業の手間自体を効率化するためには自動実行が一番いい。PCは早くて正確だ。なのでマクロを作ったりプラグインを利用したりして、製作の手順に関するコストを最小化する。結果が同じならその途中のコストは低いほどいい。その恩恵は制作者が直接享受できるからとても重要だ。当プラグイン群はそのために開発されている。

YAMATO Tools - BOOTH


当プラグインの特徴は、基本的に自分が欲しかったツールを作って、そこに他者が使っても壊れないようにエラー処理をふんだんに追加した後にプラグインとして公開している。だから使い手にとって最も使いやすくするためにコツコツバージョンアップやバグ取りが行われる。何せ開発者が一番のユーザーだからだ。そこは期待していい。これが他のネット上に点在するプラグインとの大きな違いだ。しかも開発者が日本人だから質疑応答は日本語OKだ。

(プラグイン自体はZbrushの制約によって英語オンリーのインタフェースです。ご了承下さい。)

全部やり直ししないで部分的にやり直せること

Zbrushをアナログ的手法で使っていると、過去のあるときに作った造形だけの修正が難しくなる。
Back To the Center(BTC)プラグインに代表されるように、大和式モデリング手法では、過去に作った部分に関しても、いつでも自由に修正できるような手法を取り入れる。

Zbrush用プラグイン「Back To the Center」(斜め配置したパーツを最短ワンクリックで左右対称編集) - - BOOTH

これができないとデジタルの旨味が半減する。一部を直すためにある一定の作業を全てやり直すなんてのは非効率そのものだ。これをなるべく避けるワークフローにする予定だ。

スカルプトリスプロモードで下書きモデルを作る

さて、ここで一転して下書きモデリングでは積極的にスカルプトする。というかむしろ、スカルプトメインです。なぜか?スカルプトはコストが最大となる代わりに、直感的な作業による思い通りの造形作業が可能だからだ。もちろん慣れるための練習などの修行が必要。スカルプトはデジタルツールで行う「アナログ作業」だからだ。職人的な練習が必要だ。だが下積みは不要。思い通りに造形できるようになったらそれでいいのだ。寿司を作るためにコンニャクを切ったり、おからを握る練習は必要はない。デジタルツールだから何も消耗しない。だから本番の素材で練習すればいい。自分で練習すれば技術はすぐに身につく。

スカルプトリスプロモードならば、メッシュの形状とか3DCG特有のあれこれを気にしないでモリモリ作れる。スムーズ化も細部のエッジ立ても簡単だ。ZSphereで色々やっている時間があれば、引っ張って伸ばせばかなり形ができる。合間に適度にダイナメッシュで細かめのメッシュに変えてあげれば適度なメッシュ密度で作業をどんどん進められる。

スカルプトリスプロモードの基本知識はこちら。

Zbrushのスカルプトリスの使い方(挙動の理解とワークフローの構築) - 画力がないなら立体を作ればいい


ただしスカルプトなので、盛り上げ、平坦化、エッジ立て、などなどの基礎的なブラシ造形力が必要になる。だがそれさえできればいつでも思い通りの形にできる。

もちろん下書きモデリングと謳っているように、下書きなので、面まできっちり丁寧に仕上げる必要はない。そういう作業を省くことで最短コストを実現させるのだ。ハイポリで面の制御にこだわるとそれはもはやアナログ作業なので、膨大なコストになる。下書きモデリングではざっと作って全体と細部のバランスを確認することが重要で、そういう部分を立体としてチェックすることで無駄な手直しを抑えて、作業全体としてのコストを減らすことが目的なのだ。下書きモデリングで無駄に面の制御にこだわると、いきなりこける。

マスクやペイントブラシで下書きモデルに完成イメージを描き込む

適度にハイポリならばペイントブラシで細部の書き込みもできる。筋彫りのラインや、スカルプトするまでもないような細部の造形は、ペイントブラシで描き込めばいい。サブカラーを白にしていればALT+ドラッグで消しゴムにもなる。スカルプトに要する時間の10分の1分程度でイメージ化できる。こういう線を基準にして全体のバランスの狂いに気が付けることも多い。下書きモデリングはこういう全体のバランスをチェックするための工程なので、全体の形状を「後から大きく変更しないで済むようにする」ことが重要。下書きなんだからサッと作ってパッと修正できる。もしこれが仕上がり直前の後半戦に発生すると、おぞましいほどの作業量が全て無駄になるのだ。だから最初に全体形状をきちんと把握する必要がある。

下書きモデルからローポリモデルを生成する

下書きモデリングが完成したら、あとは「面を整えたメッシュ」を作る作業に移るだけだ。ローポリでゼロから作ってもいい。だが一番効率的なのは、既に作った下書きモデルの面をある程度まで丁寧にスカルプトして仕上げた後、そこからあらゆる手段を使って形状そのままにローポリ化するのだ。リトポだ。これならば面が整いつつ、細部もある程度までは再現されるので、続きの作業をすればいいだけだ。例えばZRemesherを使うならば、それをかける直前に、面がある程度整っていると綺麗に自動でリトポされるので、その後のメッシュ調整の手間が激減する。

もちろんリトポもデジタルで行うアナログ作業そのものなので、勘と経験がものを言う部分だ。ここは自分で試行錯誤するしかない。だが作業でしかないので、造形力とは無関係だ。とは言っても、スカルプトによる造形力の次に必須になるのがこのリトポの技術だ。バイクの両輪みたいなもの。だから両方必要。

既存のZbrushモデリング手法ではここを避けているために、手動リトポなどという超絶アナログ作業を行うハメになる。大和式モデリング手法では原則的に手動リトポはしない。コストが高すぎる。それよりも上手く自動でリトポさせられるノウハウのほうが遥かにコストが低い上に、応用が利く。

ダイナミックサブディビジョンとライブブーリアンの有効活用

ハイポリのデメリットは、ハイポリで鋭いエッジを作ってしまうと、そこからの修正がかなり難しい。だからなるべくローポリ状態で作業を進めたいのだ。ダイナミックサブディビジョンがとても有効だ。これにももちろん使い方のノウハウがあるが、さほど多くはない。それよりもデジタル特有のメリットのほうがかなり多い。ポリゴン密度の上げ下げや面の形状変更をいつでもできるからだ。

さらに、ライブブーリアンと組み合わせるとローポリながら鋭いエッジを作れる。いつでもやり直せるし、修正も簡単だ。位置の調整、ベースとなるメッシュ形状の変更などもいつでもできる。最後の最後にブーリアン結合すればいい。それまでは何度でも修正できる。

完成させたら必要に応じてハイポリ化、最終調整

最後の最後であればハイポリ化して編集するのも有りだ。ローポリ+ダイナミックサブディビジョン特有の問題もある。そういったものを解決するためだけに、仕上げとしてハイポリ化して面を最終調整するのは有りだ。そして完成させればいい。ハイポリのいいところは、微調整であればかなり柔軟に調整できることだ。もちろん繊細なスカルプト力が必要だが、それは下書きモデリングができる段階で相当身についているはずだから問題ないだろう。

スカルプト力が前提でありながら、それ以外のものを積極的に活用するスタイル

ここまで読んで分かったと思うが、大和式モデリング手法ではスカルプト力が前提でありながら、それ以外のものを積極的に活用する。スカルプト力だけが全てではない。むしろ3割程度でしかない。他の7割は、スカルプトとは別のノウハウになる。はっきりいうと、思い通りの綺麗な面を保ったまま、部分的な修正を後からでもできるようにするための知識だ。この2つが揃って大和式モデリング手法は完成する。




ここまでが大和式モデリング手法の指針である。あとは私自身がZbrushでモデリングを試行錯誤しながら効率化して、自分の血肉にするだけだ。
たった一つの造形からでも、手法の見直しや修正はいくらでもできる。この手法を洗練させていくだけだ。


だから今の私にとっては、

何を作るか、よりも、どうやって作るか、が遥かに重要だ。

こんなアプローチをしながらモデリングをしている人はかなり少ないと思うので、興味がある人は見守って下さい(笑)はてなブログの読者になるもよし、RSSリーダーに登録するもよし、ツイートをチェックするもよしです。


だいぶ長くなりましたが、これで基本方針が固まりました。あとは日々、コツコツ自己研鑽するだけです。さて何を作ろうか。

今回の創作活動は約2時間(累積 約913時間)
(313回目のブログ更新)