画力がないなら立体を作ればいい

「何を作る」より「どう作るか」を考えたい人

初心者にオススメのZbrush学習本(2018年末版)

(約 3,900文字の記事です。)

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2018年はZbrushの書籍出版の当たり年と言える。私の知る限り2冊の新たな本が出版されたのだ。今回は2018年末までに出版された3冊のZbrush本について簡単にレビューしたい。ただし、Zbrush Core本を除く。無印Zbrush対象の本のみ。

ウチヤマ本 

作って覚える!  ZBrushフィギュア制作入門

作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門

  • 作者: ウチヤマリュウタ,堀越祐樹,砂山幸助
  • 出版社/メーカー: ボーンデジタル
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本の特徴は、Zbrushを初めて触るレベルの人を誘導するように書かれている点。Zbrushとはなんぞ?という解説は必要最小限に留め、さっさとスカルプトで頭部を作りに入る。また、実際の造形での上手いZmodelerの使い方を解説している点。Zbrushと言えばスカルプト、という概念ではなく、きちんとZmodelerを使ってローポリの面の美しさを教えてくれた本。特徴を箇条書きするとこんな感じ。

  1. 座学用のページは少なく、すぐにスカルプトに入る(易しい)
  2. Zmodelerの実践的な使い方が身につく(普通にわかる)
  3. スネークフックブラシでローポリの頂点を制御するという発想(普通に分かる)
  4. ロングヘアー用のカーブブラシの使い方の解説(ちょっと難しい)
  5. ハードサーフェス用の解説がある(普通にわかる)
  6. ディバイドを進めたハイポリからのローポリ化の手法など(普通に分かる)
  7. 画像ファイルから顔へのイメージの転写方法(ちょっと難しい)

総評

ローポリとZmodeler、ハイポリとブラッシング、ハードサーフェス造形、ロン毛のカーブブラシ、頂点ペイント、画像ファイルからの表情のペイント転写、ハイポリからローポリへ、などというZbrushの機能をふんだんに使った作例なので、Zbrushの7割くらいの機能をざっと知ることができる良書でした。

個人的には、こんなにも積極的にZmodelerを使って解説している本は初めてだ。ローポリによる面の美しさの重要性を知った本でもある。ただ、ロン毛特有のカーブブラシの操作には難儀した。今では楽勝だが、そのコツはこちらの記事を参照。

 

まーてい本

しっかり身に付く ZBrushの一番わかりやすい本

しっかり身に付く ZBrushの一番わかりやすい本

 

2018年の秋頃に登場した新刊。 実は半分くらいがZbrushの機能の解説。前半はまるでAdobeの解説本。なので、完全初心者よりもむしろ、ちょっとZbrushをかじった「脱初心者」が読むとかなり知識の欠落を埋めることができるという良書。Zbrushの実践的な操作項目とその意味が網羅されているので、自分が知らなかった・知りたかった機能がこの本を読むとスイスイと頭に入る。例えば、左右両対称に整えるためにミラーアンドウェルドしか知らなかったが故に不便があった項目も、この本には別の対処方法がしっかりと書かれている。SmartReSymだね。

特に秀逸なのは、Zbrush 4R8と2018の新機能がしっかりと解説されている点。これは秀逸。まとまっていて正確な情報はなかなか手に入らないので、ここをざっと見るだけでも中級者は知識の補充ができる。あるいは新たなワークフローを思いつくかもしれない。

反面、実際のモデリングのページは書籍の半分なので凝った造形は作っていない。それでも簡潔に操作手順が書かれているので、完全な初心者でもサクサク作れるだろう。以下箇条書き。

  1. Zbrush 4R8と2018の新機能がしっかりと解説されている
  2. Zbrushの成り立ちやZbrush特有の癖の紹介が序盤にある(易しい)
  3. Zbrushの機能の紹介が前半にあるので、完全初心者からすればちょっと回りくどいが、脱初心者~中級者が一読すると目から鱗の解説が多数。(普通に理解できる)
  4. モデリング解説自体はシンプルなのでサクサク作れる(普通に理解できる)

所々に、別のやり方のほうが効率的かつ本質的だなと思える操作があるが、初心者は従って問題ない。別の方法を考えつく中級者にとっては思考するいいチャンス。(普通に理解できる)

総評

実は超初心者よりも脱初心者の知識の欠落を埋めて総復習&点検するためにうってつけの本。だが、超初心者も買って損はない。機能の紹介のページは読み返すことで知識の補充にもなる。よく使う機能とそのパラメータの解説はまるでAdobeの教則本。こういうZbrush本は無かったから、傍らに置いておきたい一冊。

 

ウチヤマ本とまーてい本の比較

ウチヤマ本とは違ったアプローチでZmodelerを使ったハードサーフェスモデリングがあるので勉強になる。 どちらかというと、ウチヤマ本の次に学習したい。この2冊は相互補完できる部分が多いので、どちらか一冊だと足りない部分を見事に補い合う。例えば、

(見方。ウチヤマ本に対し、まーてい本、の順で記載)

  1. ロン毛のカーブブラシ造形に対し、ショートヘアのZsphereからの造形
  2. Zmodelerでハードサーフェスモデリングでオリジナル造形に対し、ナイフやポーチ、ベルトなどの小物をZmodelerで造形
  3. 3Dプリント出力のための後処理としてデシメーションの具体的解説に対し、モデリングまで。
  4. オリジナルブラシの添付ありに対し、オリジナルブラシの添付無し。
  5. スカートに対し、スパッツ。
  6. カーブブラシの使い方のみに対し、IMブラシの作成と利用の仕方の解説あり。
  7. 画像をポリペイントに転写する方法の解説があるのに対し、顔はポリペイント一発描き。
  8. ブラシによる盛り、削り、山の作り方の解説がしっかりあるのに対し、まーてい本ではそこがちょっと少な目。
  9. モデリング手順書であるのに対し、機能の解説とパラメータの解説があってAdobe解説本的、しかもよく使う機能の解説が手厚い。
  10. ギズモのみの使用であるのに対し、まーてい本ではギズモのみならずトランスポーズブラシの詳しい解説もあって良い(特に曲げ方)。
  11. 手首のつなぎ方が違う。ウチヤマ本はダイナメッシュ後にスムーズに対し、まーてい本は別サブパーツ+プロジェクトオールでジオメトリ的に一致させる。

こんな感じで、相互補完できる内容になっているので、2冊とも目を通すとZbrushの8割型の機能は理解できる。もちろんモデリングに必要な知識を無駄なく効率的に学べる。

例えば、ウチヤマ本の三角ロングヘアーブラシで、まーてい本のロングスカーフを作ればぷちぷち面貼り作業不要だったし、オリジナルのIMブラシでベルトを作る方法はウチヤマ本にはないのでまーてい本が勉強になる。ウチヤマ本では小物制作が本だけだったのに対し、まーてい本ではナイフ、ケース、ベルトなど何種類か簡単に作っている。つまり、相互補完でより充実した知識となる。

 

榊本 

ZBrushフィギュア制作の教科書

ZBrushフィギュア制作の教科書

 

 こちらは中級~上級になる。一つ一つに細かいプロの技が惜しげも無く書かれている。が、上記2冊を良く理解できるレベルでないと理解不能かもしれない。また、カスタムブラシの紹介とその使い方の紹介も多いので、モデリングの効率をさらに上げられる。

ただし、それは多分知らなくても上記2冊を理解できていれば多少遠回りでも創意工夫することで同じ結果に達することができる。

個人的には、2~3体のモデリング経験の後に、さらなる高みを目指して手を付けるべき本という印象。そうでないと、Zbrushの勉強ばかりで一向に何も作れていないということになる。この本はボリュームも多いので、学習そのものに心が折れる可能性もある。

さらなる高みを目指して学びたい、というモチベーションがあって初めて価値が出る情報かも知れない。情報量は上記2冊分に匹敵する。文字も細かいしチュートリアル動画もYouTubeに全て上がっている。なかなか深い一冊。

ただ、造形のアプローチ方法に榊氏特有の癖があるので、その辺も、一般的な作り方がイメージできるようになってから学んだほうが気づきが多い気がする。最初からこのやり方でいくと「なぜ?」が頭から離れないことも多い。

結論

  1. 初心者ならウチヤマ本でもいいし、まーてい本でもいい。お好みで。
  2. すでに中級者なら、まーてい本を立ち読みして考える。リファレンス本としてはまーてい本のほうが価値がある。知識の補充にも便利。
  3. 3Dプリントを考えるならウチヤマ本のほうがそれ用のノウハウが載っている
  4. 中級者の自負があるなら榊本から学ぶ

なお、来年あたりにはZbrush Core超入門講座の著者である福井氏の元からZmodeler関連の書籍が出るっぽいことがTwitterの内容からうかがえる。Zmodelerの使い方ならウチヤマ本でもフィギュア作りには十分実践的な知識だが、福井氏のほうはもう少し構造的な、例えば丸っこい自動車の例が出てくるみたいなので、その辺の情報はさらに詳しくなっていることだろう。

というわけで、今のところ、ウチヤマ本とまーてい本がすぐにオススメできる2冊ですね。

 

今回の創作活動は約45分(累積 約627時間)