(約 6,300文字の記事です。)
Zbrushの開発販売元であるPixologicがMAXONに買収された。(MAXONはCinema4Dの開発販売元。)これにより伝統的な無料アップデートが廃止されることになった。今後の最新版を利用するためにはサブスクリプション購入になるようだ。要するに無料のアプデは終わったのだ。
ではこれをきっかけにZbrush離れが起こるのか、今後Zbrushから離脱すべきなのか、などを検討した。また検討に際しては現在のユーザーのスキルレベルに分けて考えてみた。
対象読者はZbrushユーザーです。特にプロの造形師やデザイナー向け。
公式情報
リンク先は英語なのでページを丸ごとGoogle翻訳すべし。(Chromeブラウザだと右クリックから呼び出せる)
Zbrushの効果的な代替ソフトは今のところ「ない」
Zbrushをそっくり差し替え可能なパーフェクトな代替ソフトは今のところは見つからない(あってもどこかに不足がある)。なので結論から言うと、今Zbrushから他のソフトに移ることはあまり得策ではない。例えばBlenderのスカルプト機能を使っても、ZbrushでできてBlenderではできないことが結構ある。
というわけで、今のタイミングでZbrushから離脱するメリットはほとんどない。
以上(笑)
乱暴すぎるのでもう少し続けよう(笑)
逆に「Blenderの機能+スカルプト機能」で割と簡単にできることが「Zbrushのみ」では簡単にできなかったりする(四苦八苦してできる場合がある)。要するに作業内容によってはどっちが楽かが逆転するってことね。
なのでZbrushから離脱というよりもZbrush + Blenderというように「Zbrushオンリーからの離脱」という意味では、今回の騒動はZbrush以外の3DCGソフトウェアを検討するよい機会でもある。
と、私個人は思っている。思うのは自由。
今までの「無料アプデ」が壮大な祭りだっただけ
長期間の大割引セールが「終わった」。通常の販売形態に戻った。それだけだ。キャンペーンが終わったと思えば何も騒ぐことがないのだ。
厳密には「永久版購入時から1年間は無料でアプデできる権利」がなくなったので、やっぱり騒ぎたい気持ちもよく分かるw The ステルス値上げ。だが運営母体が変わったのだからそういうことも有り得る。そういう時代だ……。
ユーザーの選択肢としては
- 無料アプデが使えないならZbrushは使わない
- 無料アプデが使えないので旧版を使い続ける
- 有料アプデで常に最新版を使い続ける
こんなところだろう。
新規ユーザーならば「Zbrush以外でスタート」も有り得る
まず1については既存のZbrushユーザーの場合は最初に否定した。代替ソフトがないので離脱できない。ただしこれから3DCGスカルプトに挑戦する新規ユーザーにとってはZbrushを使わないという選択肢は十分有り得る。また一つ時代が変わった。
ZRemesherなどの付属機能が目的なら旧版でもいい
ZRemesher、スカルプトリスプロ、デシメーションマスターなど、Zbrushのスカルプト機能以外の付属機能をメインで使うならば、しばらくの間は最新版ではない永久版の旧版を使うという選択肢は十分ありだ。
他にも従来からある機能や、スカルプトについてもこれまで通りのZbrushの使い心地であれば(最新版でなくても)いい場合でも、旧版で事足りる。
なのでプロユーザーでもしばらくの間は旧版でコストを抑えるという選択肢は有り得る。
とはいえ、ZRemesherやデシメーションマスターもアプデでより便利に高性能になることも十分考えられるので、ある程度の期間ごとにアップデート権利を買うことになるとは思う。結局、いつまでも無料ってわけにはいかないのが当たり前なのだ。
有料で最新版を使い続けるのが一番無難
結局の所、多くのプロはこうなると思う。何せ運営母体が変わるわけで、有料アプデになればお金の流れができるので、開発のペースや内容も変わるはず。そう期待したい。そうなればZbrushの悪いところがどんどん改善されるはず。となれば有料でも常に最新版を使って効率的に成果を出すことを選ぶプロが大多数だろう。
2020年の晩秋~初冬に永久版を買ったユーザーが一番不利
Pixologic時代には永久ライセンス販売時に「1年間の無料アップデートの権利」が付属していた(スクショはないがハッキリと覚えている)。だがMAXONがZbrushを買い取った今では販売ページから「1年間の無料アップデート」という文言がなくなった。
そしてFAQのページにも以下のように1年間の無料アップグレード権を有しているユーザーを限定的に絞り込んでいる。
ZBrush Acquisition FAQ – Maxon
2020年12月30日から2021年12月29日までの間に永久ライセンス版Zbrushを購入した人には当然に1年間の無料アプデ権があるので、それは保証されるべき、ということを明記した結果だろう。
だがしかし!ZbrushをMAXONが買い取ったあとの話は別でMAXONが自由に商売できる。結果、今後MAXONはZbrushの無料アプデを一切しない方向に舵を切ったようだ。(だから2021年12月29日以降の購入者には無料アプデ権を付していないと理解できる。)
1年間無料アプデユーザーが限定的な理由(推測)
どうやっても以後のZbrushアプデ版をマネタイズしたいというMAXONの思惑が読める。
なので購入後に1年経過した永久ライセンス版Zbrushのユーザーにも無料アプデ権は付与していない。
というわけでほぼ過去1年以内に永久ライセンスを買った人以外は、つまりほとんどの永久版既存ユーザーにとっては次のZbrushアプデは無料ではない。
今後の対策を考える必要がある。
特に2020年12月30日よりも少しだけ早い時期に買ったユーザーが一番涙目になっているのであろう。コスパ最悪だ。(トータルコストで見ると半年サブスク1万8千円×4回=7万2千円、約2022年12月くらいまでの2年間、半年サブスクを更新し続けたほうがマシだったというオチ。)
ただしMAXON版の半年サブスクの有無や価格がまだ公開されていないのでこれは「もし従来通りならば」という推測でしかないが。
価格の問題はさておき、Zbrushは現状でパーフェクトな代替ソフトがない以上、現状維持が一番ローコストということになる(金銭的出費があったとしてもソフト間の違いを埋めるための試行錯誤、それに伴うエネルギーと時間を考えれば、ってことね。)結果、MAXONに献金する仕組みに乗せられてやるしかないわけである。しょうがない。
その分だけZbrushが良質なソフトに変わっていって欲しいと願うだけだ。
Blenderのスカルプト機能は不完全
ではZbrushから離脱する場合について考える。離脱先はBlenderのスカルプト機能について検討した結果。
そもそもBlenderはDCCツールであるので、3DCGでできることの多くを全体的に網羅している。なのでBlenderといえどもスカルプトに特化した機能はあまりない。結果、Zbrushからの代替には色々と不便が多い。
まぁZbrushがスカルプト特化型なので、BlenderというDCCツールではそりゃスカルプトについてZbrushから見れば機能が不足するのは当たり前なのであって(笑)
Blenderのスカルプト機能はあまり強力ではない。「スカルプトも(以前とは違って)そこそこできるようになりました!」というのがBlender 2.8系のアピールポイントだったわけだが、蓋を開けて使ってみれば「うん、できなくはないけれど使いにくいね。」という平凡な結果だったりする。(だから登場時にはスカルプト機能についてそこそこ騒がれたが、時間が経つにつれて話題にならなくなったように思う。
「普通に使える」という感想と、「大した機能じゃない」という感想が混じった結果、騒ぐ人がいなくなったのだろう。)
またBlenderのスカルプト機能を進化させてくれた開発者のパブロ(Pablo Dobarro)氏が「クリエーターに戻りたいので」という理由でBlender開発チームから抜けたことも大いに影響がある。今後の開発にスカルプト機能がどこまで便利になるか未知数という不安が残る。
Zbrushはそもそも全体的に特殊なソフトだが、その壁を越えて慣れてしまうと意外とよく考えられた使い勝手だと改めて感じることが多い。他のソフトを使ってみて、初めて見える部分もある。
(だからZbrushオンリーは全くオススメしていないし、無料で使えるDCCツールのBlenderとの併用をオススメしている理由でもある。)
Blenderのスカルプト機能については、そもそもBlenderは無料なので後は各自で実際にDLして触ってみればZbrushとの違いがよく分かると思う。「あ~なるほどね」という部分が結構あると思う。自分自身で確かめるのが一番確実。
かといってBlenderを使わないのはもったいない
上で検討したのはあくまでも純粋に「スカルプト機能のみ」をZbrushと比較しただけであって、「Blenderのスカルプト+その他の機能」とZbrushとを比較すると実は結論が逆になる。ZbrushオンリーよりもBlenderメイン+Zbrushサブという使い方が最も効率的という結論になる。
このテーマについては長くなりすぎるのでまた別の記事にて執筆予定。(近日中に公開予定。公開後にはここにURLを貼り付ける予定です。)
【結論】各自の今のZbrush依存度によって決まる
結局の所、業務でZbrushに依存している人はまずは有料アプデでZbrush継続が一番無難だ。代替ソフトを探す必要もなければ機能の検証も不要だ。金銭コスト以外で必要な物はない。自分が生み出すべき成果物に集中していればいいので一番楽。
次に、Zbrushのスカルプト機能よりはZRemesherなどのZbrush内ツールに依存している場合は、Zbrush以外のスカルプト可能なソフトを検討する価値がある。そしてZbrush内ツールは永久版の旧版を時々使うというワークフローにすれば、あえて毎回アプデする必要がない。ただし数年単位でアプデする必要はあるだろう(もしそれが可能ならばの話)。あまりにも古い旧版を使い続けるのはデータの互換性に起因する(分かりづらい)トラブルの原因になり得る。
結局、Zbrushを使い続けるためにはある程度の期間ごとにお金をかける必要がある。
もし代替ソフトが見つかり、スカルプト機能に不満がなければ、少なくともスカルプト機能についてはZbrushから離脱できる。またZRemesher、スカルプトリスプロ、デシメーションマスターについては、あまり細かい事をやらないならばZbrush Coreという選択肢もある。Coreで最新版を使い続けるならば金銭コストはかなり少なくなる。
またZRemesher、スカルプトリスプロ、デシメーションマスターの各機能に相当する機能がZbrush以外で見つかったならば、完全にZbrushから離脱することも可能だろう。
ただしそこまでの道のりは長い。ソフト選びから始まり、それらの機能があるか探し出し、マニュアルを読み、機能に不満がないかどうかの裏付け&実際の動作検証も必要。それらが全てOKだったときはZbrushから離脱できるが、どれか1つでもNGならば今後どうするかを再び検討する必要がある。短期間では難しいだろう。それ相応のエネルギーと時間を投じる必要がある。
ま、そもそもソフトを変えるということはそういうことなんだけどな、それを惜しんだら「今使っているソフトウェアに依存」し続けるので、悪い意味でガラパゴス化する上に、状況変化に耐えられない脆弱な環境になるリスクもあるわけだ。
なんにせよデジタルツールを使う上では、常に「使い方の学習」と「ワークフローへの取り込みの検討」がついて回るので、その努力は惜しまないほうがいい。
結局、ZbrushがMAXONの手に渡って突然に蜜月の関係から追い出されることになった古参のZbrushユーザーが、突然に次の一手を迫られるという悲劇から始まった2022年。
今年は波乱の幕開けである。
(ちなみにサブスクユーザーには全く無関係な話。。。)
今回の創作活動は約2時間30分(累積 約2,666時間)
(777回目のブログ更新)
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