(約 8,400文字の記事です。)
私はかつて色々な動画編集ソフトを触ったことがあるが、これからの動画編集ソフトとしてサイバーリンク社のPowerDirector 365を使うことにした。現状では私の環境にいくつかのバグが見つかったのでサポートに相談中だが、それらを補って余りある使い方ができる。ずばり「マウスに触らずにキーボード操作のみでカット編集を終える」ことができることが分かったからこそ、PowerDirectorをメインで使おうと思った。
今回はそんなPowerDirectorの魅力をお伝えしたい。
(ただしPowerDirectorのみでは実現できず、別のフリーツールを駆使します。詳細は後ほど)
対象読者はPowerDirectorに興味のある人です。
- 著者の経験値
- やりたいこと(想定する読者層)
- PowerDirectorの入手先
- ソフト買い切りか1年サブスクか?
- PowerDirector 365のバグ?
- PowerDirector 365を買うだけで手に入れられるもの
- ちょっといいと思った点
- デメリット
- 他の動画ソフトの比較検討(簡易版)
- PowerDirectorを快適化して本領を引き出す
- マウスに触らずにカット編集を終える
- 【まとめ】PowerDirectorはカット編集をキーボードのみで終えられるポテンシャルがある
著者の経験値
触ったことがある動画ソフトはこちら。
- Premiereシリーズ
- Ediusシリーズ
- VEGAS Pro
- AviUtil
やりたいこと(想定する読者層)
私のやりたいことはこんな具合。
- デスクトップの操作内容の録画と編集
- とにかくカット編集を早く済ませたい
- 手間のかかるエフェクトは不要
- NVIDIAグラボによるVNEncを使った高速出力(画質は多少犠牲にしてOK)
- Vrewとの往復による簡単作業での字幕入れ
とにかく「サッと録画してサッと編集し、できるだけ早くアップロードして一区切り付ける」ことを最優先。そのためには多少の画質の犠牲はやむなし(結果として仕上がりまでにVNEncを複数回かけることもやむなし)。また基本的にカット編集でOKで、演出のための作業は省略。とにかく内容が伝わればいいという動画を「高速に仕上げる」ことを最優先とする。
ただし、簡単な操作で「注目して欲しいところに視線を誘導する四角枠や矢印」は追加したい。これを簡単にD&D程度で済ませられることが重要。
他にも読者層として想定する内容は以下の通り。
- YouTubeでよく見かける簡単で派手なエフェクトで十分
- ただし面倒な手順は踏まずにエフェクトを付けたい(テンプレの活用)
- 凝ったことをするつもりはない
- とにかく簡単でお気軽に仕上げたい
- カラーグレーディングの微調整や音質の微調整は不要
- Full HD(1920x1080)で十分。4K, 8K出力は想定しない
- DVDやBDなどディスク出力は想定しない(できるけど、ファイル出力のみでいい)
残念ながら映像演出作品としてカリカリに仕上げた一品を作りたい人はここでブラウザバックでOKだ。PowerDirectorには荷が重い話だから。
Filmoraよりもオススメ
動画編集の初心者にとってもPowerDirectorはオススメできる。Filmoraも検討したけれど、PowerDirectorにはあるスマートレンダリング機能SVRTに相当する機能がFilmoraにはないっぽい(SVRTはタイムラインに乗せた素材のうち動画と音声に加工していない部分は再レンダリングなしで出力する機能)。なのでFilmoraの場合は動画の一部を変更しただけでもタイムライン全体の再レンダリングになって時間の無駄が多いと感じた。
これは私の用途では後から動画内の一部だけを差し替えたりする使い方が想定されるため、Filmoraは早々に検討から除外した。
PowerDirectorの入手先
PowerDirector 365のサブスク購入先はこちら。(
Mac対応版はこちら
)
まずは1ヶ月間の無料試用期間があるがフル機能が使えるわけではない。例えば一例として、以下の機能は試用版では利用できなかった。
- スクリーンレコーダー(アドオン扱い。試用版ではアドオン導入不可。)
- SVRTによるスマートレンダリング機能
- NVEncによる高速ハードウェアエンコード出力
- H.265 HEVCエンコードファイルの読み書き
なお製品版では、自動でScreen Recorder 4がインストールされたし、NVEncによるエンコードもできた。またH.265の出力も選択可能になった。
ソフト買い切りか1年サブスクか?
例えば買い切りならばAmazonからPowerDirector 19を買うことになる。価格も6千円台とお手頃だ。私もこれを買おうかと思っていた。
だが、初回のサブスク申し込み時にはほぼ常時25%OFFで、こちらも約6千円台と、ほぼ同じ価格。
サブスク版には「色んな素材が1年間無料で使える」というメリットがある。それは動画・BGM素材は当然として、その他にもフィルター系、動画用テンプレートなど、色んな素材が毎月追加される。各種素材を無料で1年間試せるならば、サブスク版を試す価値が大いにある。
個人的には、後述する「YouTube受けする派手で実用的なテンプレ」が多めなので、YouTubeメインならば価値があるだろう。
PowerDirector 365のバグ?
2021/05/15現在、私の環境ではなぜか製品版でもSVRTが有効にならない。価格なんちゃらコムの掲示板によれば、PowerDirectorは過去にもメジャーアプデ時に同様にSVRTが突如として効かなくなったバグがあり、当事者からのユーザーサポートへの問い合わせの結果、次のアプデであっさり直ったという経緯がある。
なのでサポセンに問い合わせ中。
2021/05/18追記
修正ファイルをサポートから受け取って適用したところあっさりと解決。以下の致命的バグについてはまだ返答なし。
残るは致命的なバグのみだが、カット編集すると継ぎ目の1フレームに「カットしたはずの絵が1フレーム入る」というもの。
PowerDirector 365のカット編集後のレンダリング結果に余計なフレームが残る - 3DCGで何をどう作るか考え中
シビアなカット編集はバグが直るまでNGだが、のりしろとして後ろに数フレーム同じような絵がある場合や、クロスフェードなどでつなげれば目立たないので、どうしてもカット編集でないとダメな場合以外ではごまかしが利く、といえる。
今回はこのバグを差し引いても、PowerDirectorに歩があると思ったのでメインの動画編集ソフトとして採用することにした。
私は元々はVEGAS使い
VEGASはソースネクストのセール時に買うと半額近い8千円台で買える場合がある。
これまではVEGASを使ってきたが、エフェクト系がショボくて見栄えしないことと、どうしてもマウスを触らないとできない編集が多かったことと、の2つの理由で、今回からPowerDirectorに乗り換えることにした。
とはいえ、VEGASはファイルの入出力が豊富なのでファイルコンバーターとしてはまだ十分に使える。
さて、ここからはPowerDirectorの良いところを簡単にご紹介。
ただし、以下の話はPowerDirectorを買うだけですぐに実現できるとはかぎらない。一部の機能については別途用意した無料の別ツールとの組み合わせで実現可能となった。なので、PowerDirectorを買うだけですぐに以下のホットキー操作を実現できるわけではない。
とはいえ、まずは買うだけで手に入る機能からご紹介。
PowerDirector 365を買うだけで手に入れられるもの
- 編集ソフト本体
- DL可能な各種無料のテンプレ、アドオン、素材
- デスクトップキャプチャソフト(キャプチャ領域は自由に設定可能)
- 素材そのものの部位の出力はSVRTで非破壊・無加工で高速出力
- D&Dだけで使える実用的な各種エフェクト
- Vrew出力のSRTファイルのインポート、位置と色の調整
- 高画素数動画を処理するための仮の軽い動画(シャドウファイル)の作成による編集
- プレビュー画質を下げるとある程度は軽く編集できる
- プレビュー画質を上げてレンダリングプレビューもできる
この辺が、ごく普通の特徴だろう。目立った弱点もない。動画編集の初心者がごく普通に扱えるいいレベルだ。ただし極端に凝ったことはできない場合がある。例えばとあるエフェクトの掛かり具合についてキーフレームの微調整などは、テンプレやエフェクト素材によっては調整できない(項目がない)場合もある。
逆に言うと、ざっくり作るところまでは簡単に仕上げられる。簡単かつざっくりと、というのがPowerDirectorの特徴。
作業の速さと効率が優先で、細部や緻密な表現には手が届かない。
それでいい場合には何の問題もない。
ちょっといいと思った点
次に、私がいいと思った特徴をいくつか書き出す。
- Fキーで全画面表示可能(VEGASにはない)
- タイムライン全体を画面にフィット表示させる機能(VEGASにはない)
- SVRTという、動画の見た目と音声に加工を加えない部位はそのままスルー出力する機能
- PageUp, PageDownキーによってクリップの選択状態の切り替え(VEGASにはない)
- 1秒間隔でのカーソル移動のホットキーがある(必須な機能だが)
- (YouTubeを含めた日本語情報がネット上に割と多い)
カット編集に必要な操作の多くがホットキーで操作できる点が決定打であった。詳細は後ほど。
デメリット
無料体験版のみのデメリット
- 無料体験版の動作が重いので騙されそうになる(製品版のほうがだいぶ軽い)
- 無料体験版の音声処理にバグがあるっぽい(ガガガ~、とかビビビ~と鳴る場合が何度か発生)
ところが製品版にしてみたらそんなことは起こらず。無料体験版で客を逃してどうする(笑)
以下、製品版での感想
- タイムラインのシークはVEGASよりもちょっと重め(我慢できる範囲だがサクサクとは言えない。シーク時にはガガガッという動き)
- 現在のバージョンでカット編集時の素材の継ぎ目に「消したはずの」1フレームが見える問題(前述)
- 凝ったエフェクトや字幕では仕様上作り込めない場合もある
- 出力ファイル形式の細かいパラメータ設定ができない(自由度が少ない)
- UtVideo Codecなどを利用した可逆圧縮aviファイルを出力できない(avi出力は絶望的)
- プロジェクト自体の詳細な設定ができない(ある程度普遍的な設定から選択するのみ)
- ホットキー設定できない項目のほうが多い
普通のことは普通にできる。逆に、「普通の規格の動画ではないちょっと変わった動画」を作ろうとすると、ファイル形式自体をそうすることができないし、映像面においても変わった特殊な加工は難しいと感じる。なので「何をやりたいか」によってはオススメできないことにもなる。
とはいえ、普通にYouTubeで見られるような演出のものはたいていやれると感じる。
なおサブスク製品版購入後であっても不満が解消されなければ30日以内であれば返金処理が可能。
なので、ご自身のやりたい動画編集が果たしてPowerDirector 365でやりきれるか否かで迷っているならば、まずは買って1ヶ月以内に結論出せば一番いいだろう。
個人的な感想では、動画編集初心者の8割程度は満足すると思う。2割のこだわり組にはちょっと不満が残るだろう。
他の動画ソフトの比較検討(簡易版)
さて、ここまでで一通りPowerDirectorの仕様が分かったと思う。後は簡単にだが他の動画編集ソフトの違いの感想をば。
あくまでも私の場合の、記憶と体験に基づく感想です。真実は各自で体験して判断して下さい。
Premiere Proだが、月額が払えて、かつProでないとできない編集内容がある場合には選択し無し。素直にPremiere Proを使って。エレメンツに関してはオススメしない。動作が重い、やれることが少ない。あえてエレメンツを選ぶ理由がない。
Ediusシリーズだが、Neoを打ち切った以上、6万円近い金を払ってまでEdiusを使う理由があるかどうかによる。個人的にはPremirere Proに行くと思う。あえてEdiusを選ぶか?といわれればその理由が私にはない。長年のEdiusユーザー以外では、つまり新規参入するメリットは少ないかも知れない。
VEGASのほうがタイムラインシークやタイムライン操作は軽い。シャドウファイルの作成中及び作成後の動作もVEGASのほうが軽い。だがVEGASはいかんせん派手な見た目の良いエフェクトがなく、手間の割にはショボいエフェクトしかないのが難点。素材そのものの荒い編集だったり、音声の整形など、素材そのものの事前処理という意味では使える。ファイルの入出力にも不自由しない。ただし、当初の目的のように「サッと作ってパッと出して作業を終える」のには向かない。あくまでも一次加工のための通過点という使い方になるだろう。なので、本当にカット編集のみでOK、あるいは動かない半透明画像をオーバーレイで重ねるのみでOK、という用途までならばVEGASが軽くておすすめ。
ただ、そうなるとあまりYouTube受けするとは思えない。
AviUtilは、使いこなせているならば何も問題はないだろう。ハードル高めだからオススメはしないが。とはいえ、新たな演出を加えたり、簡単に見た目のよい派手な演出となるとPowerDirectorの多彩なテンプレやエフェクトを利用したほうが楽。逆にいつものお馴染みのスタイルで貫くならばAviUtilでできているならば何の問題もないだろう。
ここまでの話だと、動画編集の初心者くらいにしかPowerDirectorが魅力的に思えないだろう。だが本題はここからだ。というのも、こういうことができることを欲しているプロユーザーがどれくらいいるか、というコアな部分の話だからだ。(なのでまずは一般的に必要とされる比較検討情報をここまで書いた。)
とはいえ、以下の話はPowerDirectorをインストールしたポン付け状態では実現できない。とあるフリーツールを入れて設定することで実現可能な話なのだ。
なのでPowerDirectorを入れただけでは実現できない点に要注意。
ただし詳細は書ききれないので今回は紹介編に留める。
PowerDirectorを快適化して本領を引き出す
以下の項目は、PowerDirectorをインストールしただけでは「機能自体はある」が「ホットキー1発で呼び出せない」のだ。なのでホットキーがある場合にはガチャガチャと何度かキーを叩いて呼び出す。ホットキーがない場合にはマウス操作になる。
- 素材をカットした直後に水色選択状態の解除(クリップモードからムービーモードに自動復帰)
- カーソルの左側をカットして素材自体を左に詰める(リプル編集時の素材削除相当)
- 同様にカーソルの右側のカット&詰め
- 素材が灰色の状態からカーソル下の素材を削除して詰める
- クリップモードとムービーモードを1つのホットキーでトグル切り替え
- 並んだカット素材の頭にカーソルを左右にジャンプ移動させる
- 10フレーム単位の自動カーソル移動(ジャンプではなくぬるっと移動)
- トラックの尺全体を画面にフィット表示(動画の全体表示)
私の環境では、上記の全てをホットキーワンプッシュだけで実現させることに成功している。上記の操作ではマウスに触る必要がない。どれだけ高速にカット編集できるか想像できるだろうか。
ホットキーワンプッシュだけで「カーソル地点でカットされ、左側(または右側)の素材が削除され、余った全体の素材が左に詰まってくれる」のだ。トリミング後にはムービーモードになっているからそのまま自由にカーソルを移動させられる(水色になっていないから)。つまり残りの素材の切り出しに進んでいける。
サクサクと素材のトリミングが進む。結果、カット編集素材のみがタイムラインに残る。
私はこれがキーボード操作オンリーで実現できたことによって、仮にカット編集のみの場合であってもVEGASからPowerDirectorに乗り換えることにした。VEGASでは上記のいくつかがどうやっても「マウスに触らずには実現できない」からだ。
マウスに触らずにカット編集を終える
マウスに触らずにキーボード操作のみでカット編集を終えられることが私にとって重要だったのだ。(1トラックから素材を切り出すとき)
以下はホットキーワンプッシュです。
- カーソルを速度別で移動させる(1秒間隔、10フレーム間隔、1フレームごとの移動を3種類のホットキーで実現)
- カーソルの左側、右側の素材トリミング&詰める動作(リプル動作)
- カーソル直下の素材の削除&詰める動作
- いつでも一発でタイムラインを全体フィット表示(タイムラインの全体を眺める)
とあるフリーツールを使って設定することで、これら全てをキーボードだけで操作できる。それができた動画編集ソフトは、私の試した限りでは今のところPowerDirector一択なのだ。
VEGASではタイムライン全体フィット表示がないし、ムービーモードからクリップモードへの変更がホットキーではできなかった。
とはいえ、ツールを使ってちから技を駆使すればVEGASでもムービーモードとクリップモードとのトグル変更はできなくもないのだが、後の編集にちょっとでも動画演出を加えたいならば、あえてVEGASで作業を開始するメリットがない。PowerDirectorならばそこから楽しい演出を簡単にできるからだ。
【まとめ】PowerDirectorはカット編集をキーボードのみで終えられるポテンシャルがある
くどいが、PowerDirectorのみの機能で最初からこれが実現できるわけではない。とあるフリーツールを駆使することで実現可能。マウスに触らずにカット編集が終わるので、素材の切り出しが爆速である。私は長年その実現のために試行錯誤しては「結局そのソフト+フリーツールの組み合わせでは不可能」という壁に何度もぶつかっては諦めてきた。
だが、ついにPowerDirectorではそれが全部実現できた。なのでPowerDirectorをメインにしようと思ったわけ。
今回は長くなりすぎたのでこの辺で終了です。
上記の実現のための方法はまた別の機会にご紹介する予定です。
とりあえずPowerDirectorの購入方法はこちらをご覧下さい。
今回の創作活動は約4時間30分(累積 約2,395時間)
(722回目のブログ更新)