(約 4,600文字の記事です。)
前回の記事が好評だったので、その第2弾です。
今度はCADベースの造形をFusion 360で作ってBlenderのアドオンであるQuad RemesherとZbrushとによる加工の可能性を示す記事です。
- はじめに
- テストメッシュはFusion 360で作成
- Quad Remesherの実力
- 全体フィレット付きモデルの準備
- Quad Remesherの実力(フィレット編)
- Zbrushに持って行って加工する(本題)
- Fusion 360とQuad RemesherとZbrushとを連携させるメリット
- 面荒れを生じさせないモデリングのワークフローが1つ増えた
- まとめ
はじめに
ポイントは、 1. 角丸ベースである点 1. 角丸の形状がリメッシュ後に再現されている点 1. 平面がリメッシュ後も平面である点
この3点だ。別にカックカクのローポリが綺麗にリメッシュできるかどうかなんて大した問題じゃない。
ある意味普通だからだ。エッジ検出のアルゴリズムがシンプルだと思うから。
それが普通にできるリメッシュツールはすでにたくさんあるからだ。
真円ベースの角丸ベベルがそれに近い印象のまま四角ポリゴンベースでリトポされることに意味がある。
平面が平面のままなるべく正方形に近い四角ポリゴンベースでリトポされることに意味がある。
これが重要な点だ。
だが、まずは順を追って理解するためにも、カックカクのローポリのリトポ結果から見てみよう。
テストメッシュはFusion 360で作成
2年ぶりくらいにしっかりと触ってみたが、結構インターフェースが洗練されていて30分も触ると思い出した。が、三角部分だけはどうにもならず、あ、スケッチから作ればいいのか、と気付くまでに30分(笑)
色んな要素がてんこ盛り。が、ポイントは先端の三角部分だ、ここだけが「原型レベルで唯一の」三角っぽいコーナー。しかも鋭角。これは扱いづらい。
もちろんSTLにすれば三角ポリだらけですけど。
実は以前にこれと同じような物をBlenderのフルーエントで作ってみたのだが、結構大変だった。何が大変かというと、面一(めんいつ、つらいち)なメッシュ同士のブーリアン結合ができない。これは盲点だった。もちろん知識としては知っていたが、改めて直面すると結構厄介な問題。対してCADではごく普通に扱える。そう、ごく普通に、だ。
Quad Remesherの実力
複雑な操作は一切無し。X軸の対称ボタンにチェックを入れて、10kポリ指定でRemeshボタンをクリックしただけ。これだけ。3秒です。あとは待つだけ。
文句の付けようがない。そして念のため表面状態(フラットシェード)も見てみよう。
綺麗ですね。うん、綺麗だ。
では、ここから意地悪な全体角丸ベベル(フィレット)を適用したモデルでテストしてみよう。
全体フィレット付きモデルの準備
CADの強みはずばりフィレットだ。この画像もちょっと操作するだけでどど~んとできる。ただし演算時間がかかるため、パラメータ変更にはちょっともたつく。それだけ全体フィレットは複雑なのだ。
後の三角面をみれば、どれだけ複雑な計算が必要かよく分かる。CADでないと正確な処理が難しいのも分かる。なお、小さな角丸なのでメッシュは少し細かめでSTL出力した。
Blenderでは不可能なこういう部分もきちんとメッシュの破綻なしに形になっている。これこそがCADの実力だろう。
Quad Remesherの実力(フィレット編)
結果がこちら。前回同様に10kリメッシュです。X軸対称ONにしてRemeshボタンをクリックして待つだけ。
これのどこに不満があるというのだろう。凄いとしか言い様がない。
フラットシェードの見た目はこちら。
完璧すぎて驚けない。それを超えてため息が出るわ。
Zbrushに持って行って加工する(本題)
ではZbrushにGoBで持って行ってディビジョンレベルを1つ上げて観察。
圧倒的完成度。裏も見ておこう。綺麗な平面。
メッシュを表示させない限りこれがハイポリとは思えないが、実は十分ハイポリです。
ではローレベルを削除してメッシュとして確定させた後、自由に変形させてみよう。
Fusion 360とQuad RemesherとZbrushとを連携させるメリット
こういう表現ができるようになります。
- CADであるFusion 360だけでは絶望的に無理。
- Blender(+Fluent)+Quad Remesherで可能だが手間がかかる(変形量の調整が特に)
- 今のBlender2.81aでは快適操作可能なポリゴン数に実質的に上限がある(急にPCが重くなる)ためハイポリの扱いに不安が残る
- Zbrushのみではそもそも綺麗な平面を保ったまま、かつRが一定の角丸ベベルをあらゆる角に適用することが極めて難しい(膨大な手間)
もちろんZbrushも万能というわけではなく、回転系・ひねり系に弱いのでそういう変形ならば、実はBlender上で変形加工してからZbrushに持ってきてディビジョンレベルを上げる手もある。図の例は、あくまでもZbrushにそのまま持ってきて加工した場合の例。
もちろんブラシによる盛り加工ならばサブディビジョン付きで作業ができる。図はデフォーマー変形だからメッシュを確定させる必要があった。
ローポリモデルがハイポリメッシュで表現できることのメリット
図のように思いのまま変形加工できるのがポイントだ。ローポリモデルの形がハイポリで表現できているわけだから当たり前だが、問題は今までそのような手段に私が気付けなかったことだ。前回の記事で発見したQuad Remesherという手段。これはとても有効であることをお伝えするための記事。今回は前回よりもハードルが高いモデルを使用したが、それでもいけた。
つまり、Quad RemesherはFusion 360とZbrushとの橋渡しをできる部分が多い。(もちろん綺麗にリメッシュできない形状もあるけれど。)万能ではないが、使える場合が多いだけでも活用シーンが広がる。
この活用事例を応用すれば、元々がスパッと平面だった形をベジェ的に滑らかに変形させることで面荒れがそもそも発生しない。つまり、面を整える作業を省略できる。本質的・根本的に省エネ&効率化できる。
面荒れを生じさせないモデリングのワークフローが1つ増えた
そういうこと。
例えばFusion 360でナイフや日本刀などのベースをさくっと作り、Quad Remesher後にポリゴンモデリングとして日本刀の微妙な反り・ねじれを調整することも可能だろう。Fusion 360上では難しい変形もポリゴンメッシュになれば容易に加工できる場合も多い。もちろんZbrush上で加工してもいいだろう。
フィギュア造形時のハードサーフェス小物作りでも役に立つだろうし、3Dプリンタ出力品であっても、CAD造形にもう一つ個性を加えたいのであればQuad Remesherでポリゴン化して加工すればいいだけの話。
これはつまり、造形に対するアプローチ方法がまた一つ増えた、とも言える。
知的進化の必要性
モデリング手法も、使うツールが変わればどんどん変化する。最終的に満足のいく形が、最短の手間&エネルギーでできればそれが幸せだ。それを探求する価値はあると思う。いつまでも従来通りの手法では、製作コストが変わらない。それでは進化する人に後れを取ることになる。
3DCGは常に進化しているので、あまり頑なにならずに、柔軟に新しいツールの模索とテストとワークフローへの取り込みの検討をした方がいい。ライバル達はそれを模索しているのだから、同じ物を作る場合でも差が出てくる。
リグ入りロボットの嘘絵作りにも使える?
これだけメッシュが綺麗だと、ロボットモデルのリグ&ウェイト済みの可動キャラにポーズ付けした際に、ハードサーフェス部分にちょっとウェイトを塗っておいて、ポーズによっては嘘絵として微妙に変形させて可動部の破綻を防いで「それっぽく見せる」荒技もできそうだね。あくまでも素人の意見です(笑)
だってアニメ顔だって嘘3DCG的変化があった方が自然に見えるのだから、ロボットでもそういう表現で自然に見せても悪いはずはない。
そもそも工業製品を作っているわけじゃないからね、静止画、動画表現ってのは。
まとめ
というわけで今回の記事でも、やはり、Quad Remesherの価値が認められた。これは使い倒す価値がある。
また、CADであるFusion 360の価値も再認識。これもまたフィレットの強力さは随一だ。CAD以外のソフトでは極めて難しい。
やはり自由なモデリングの空に羽ばたくためには、Zbrush、Blender+Quad Remesher、Fusion 360が必要なのか……。
学習コストだけがネックだが、しょうがない。得意分野で被る部分がない以上、網羅したければ全部を埋めるだけのソフトの学習が必要。
うぬぬ。
今回の創作活動は約2時間30分(累積 約1,296時間)
(460回目のブログ更新)
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